★★★★★
・2016年9月15日(木)16時
・クァンリムアートホール
・キム・オッキュン:강필석(カン・ピルソク)
ホン・ジョンウ:김재범(キム・ジェボム)
高宗:박영수(パク・ヨンス)
イ・ワン総理:김법래(キム・ボムレ)
和田:정하루(チョン・ハル)
激シブストイックミュージカル
今回のハンミュ旅行のライナップは、①Trace U ②ジャックザリッパー ③キンキーブーツ ④ゴーントゥモロー ⑤あの日々 という、男!男!たまにオカマ!男!男!まさに秋の歌うま男祭!It's raining men! と言わんばかりのライナップでした。
どこかに「今年の秋はブロマンスミュージカルが勢ぞろい!」みたいな記事が出ていたけど、まさにそれ。
それでもある程度人数がいるミュージカルだったら、主要キャラに一人や二人、女の子がいるじゃないですか。
なのに本作。
遂にメインキャラに
女がいない!
もちろんだけどオカマもいない!
女っけゼロ!
スチール写真やボード類は全部白黒。シブい。シブすぎる…。
あ、白黒なのはボードだけではなく、演出全体もだった。モノクロを目指したのか、ほっとんど色がなかったなぁ。それこそ昔の白黒映像見てるみたいで。
衣装はカッチリしていながらも、少しアバンギャルドなデザインもちらほら。ダンスもコンテンポラリーっぽくて、スタイリッシュなビジュアルだった。
演出の話ついでにねじ込むと、最新のミュージカルらしくプロジェクションが多用されていて、舞台芸術の未来を垣間見た気がしました。つまりそれは、「大道具が必要なくなる?!」というものです。
ちょっとした障子や本棚のみならず、神社まで、少し前なら大道具使ってたような背景をプロジェクションで作ってて、物理的なセットの多くを代用できてしまっている!
プロジェクションの方が場所も取らなくて場面転換もきっと簡単だし、どんどんこんな風になっていくのかなーと思いました。
最終的に金玉均が暗殺される話だと思ったら
歴史モノの本作品、内容は政治思想と思惑とオトコの友情と苦悩に満ちていて、男女の恋愛などというやわなものは見る影もなし。
個人的には全然良かったんだけど、「今日は気分転換にミュージカルでも見るかな~」とか、「彼ピとの次のデートはミュージカルがいいな☆」みたいな状況には向かないかもしれませぬ。
それよりは、「この俳優の勇姿がぜひ見たいわ!」とか、「今日はクールなものがいいわね」とか、はたまた「韓国の歴史モノに触れたいの!」というときにはオススメでござります。
新作のため前情報がほぼなく、韓国語も覚束ない中、韓国人の友人と一緒に見に行ったのですが、私の理解+彼女の説明によれば、どうやらこんな話。
清やら?日本やら?が虎視眈々と朝鮮への支配を強めようとする戦乱の時代。
日本に倣って朝鮮の近代化を推し進めたい金玉均(キム・オッキュン)は、高宗と共にクーデターを試みるも失敗、日本へ亡命。
同じ頃洪鐘宇(ホン・ジョンウ)は、フランスに自費留学するための資金を日本で働いて貯めていた。金玉均の学識や思想に敬意を(多分)持っていた洪だったが、フランスから帰ると高宗に金の暗殺を命じられる。高宗はイ・ウァン総理に言い包められ、金玉均の思想や存在自体をも危険視するようになっていた。
その頃金は、日本政府にとって厄介者だったために小笠原送りにされていたが、帰京したところ洪を紹介される。かくして洪は中国の高官からという偽の招待状で金を釣り、二人は上海に旅立つ。ここまでが第一幕。
上海に向かう船上、明るく戯れる金に心が揺らぐ洪だったが、「俺を殺してお前は生き抜くんだ」と金に言われ、遂に暗殺を決行する。金の遺体は朝鮮中で晒され、日本では金の元ボディーガードの和田が、神社で線香を上げつつ、金の死後の出来事を折りに触れて金に報告している。
洪はというと、金の遺志を継ぎ、勢力を強める日本の要人や親日派を暗殺するなどして日本に抵抗するが、遂に日本は韓国を併合。高宗は日本勢力の強化や閔妃殺害を受けて金の暗殺を後悔し、苦しんだ末に洪に暗殺される(?)。洪も抵抗を理由に日本軍に?銃殺される。おわり。
えー
金玉均死ぬの早くない…?
あらすじ的に、金玉均の話だと思ったから、
金玉均が最終的に暗殺されるまでの話だと思ったから、
金玉均のことググって、日本と関係の深い人だけど反日じゃない、
これなら韓国人の友達も誘って見にいける!と思ったのに…
(さすがに安重根ミュ「英雄」とかは一緒に見に行けないからね。そもそもあれを見るのか、という問題もありますが。でもちょっと見てみたい。)
なのに金玉均さん、二幕始まって15分で呆気なくお亡くなりになり、後半ほとんど洪鐘宇の話だったよ!
その時点で頭の中「?」ってなってるのに、日本帝国軍出てくるし、閔妃殺されるしで、その後どんどん雲行きが怪しくなり、韓国人の友達が隣にいるのもいたたまれなくなってきたと思ってたら…洪さん、最後日本軍に銃殺されちゃったよ!!
もうあの瞬間、脳内
あっ…
てなったよね。一人で見てるならいいけど、こんなシーンで隣に韓国人の友達いたら、さすがにちょっと気まずいじゃん。
終演後に友達にストーリー確認した時、日本軍云々のくだりについては彼女の口調も少し控えめだったから、多分そんな私に気を遣ってくれてたんだと思う。いい友達を持ったわ。
歴史については、双方の主張は程度の食い違いこそあれ、日本がかつて韓国にひどいことをした歴史は変わらないんだし、若い世代はそういうことを理解した上で、私たちは仲良くしようねって付き合っていきたいと思うのよね。あまりここでそういう話をするつもりはないんだけど。
それなんだけど少し調べたら洪さん、史実的には晩年どうなったのかは分かっていないよう。だから金玉均暗殺後の暗躍とか、高宗の暗殺も多分にフィクションを含んでいて(史実では高宗って洪鐘宇より長生きしてるし)、洪鐘宇も本当に日本軍に処刑されたかはわからないけど、ミュージカル的にはきっと、それが一番簡単な終わらせ方だったんでしょう。
でも印象としては日韓併合とか銃殺のくだりはかなりドライで、反日感情を煽ったり、前面に押し出すようなことはなかった。あくまで金暗殺後の洪と高宗に重点を置いている印象。会場には日本人の人もちらほらいたし、本作は日本人もあまりセンシティブにならずに楽しんでいいものと思う。
洗練された楽曲をイケボイスで堪能しよう
見に行った時点ではプレスコールをまだやっていなくて、曲をほとんど知らずに行ったから、どんなもんかと楽しみ半分、心配半分。でも初めての曲に対するハードルが高い私でもすんなり入ってくる音楽で、結構好みだった。
ジャンルはどれなのかはよくわからないけど、メロディが洗練されてて、なんかフランスっぽい感じ。あまり冒険はせず、クラシックで正統派でありながらも、曲ごとの個性があるなと思いました。
そして軒並み男性ソロorデュエットだから、全編を通してメインキャラの歌が存分に楽しめます。メインキャラを好きな俳優が占めていたら、たまらないなこのミュージカル!
私はというと、観賞後しばらくはあっさり過ごしてましたが、公開されたプレコ動画を見たら遅ればせながらどっぷりハマり、ちょっとした時間差スルメミュージカル状態。特に"잘가라 옥균"が切ない苦悩ソングで好きだけど、どの曲も聞き返すにつけ綺麗な曲ね〜。
今回見た俳優さんはみんな初めて。カン・ピルソク氏もキム・ジェボム氏も、演技・歌ともに手堅くて良かった!このペアはデュエットが特に好きだったな。彼ら、わりと声が似通っている。
で、デュエットってのは二人の声質が違ってなんぼでしょ!とこれまで思ってたけど、二人の声が混ざり合うようなデュエットも悪くないなと今回思い直したり。
二幕序盤に金玉均が亡くなって以降、本作はキム・ジェボム祭りと化したのですが、今まで完全にノーマークだった彼、何のなんの、なかなか良かったじゃないですか。
まずビジュアルがいかにも苦労&苦悩しそうでgood(どんなだ)。実際ほぼずっと苦悩してるんだけど、それがちゃんと歌にも出てて、カン・ピルソクの「自分の信念に従い真っ直ぐ生きてきたお坊っちゃま」風オッキュンとの対比がちゃんと出てた。後半ほぼ彼が単独主演状態だったから、たくさん見られて良かったわ。本作のMY最優秀賞はあなたにあげたいと思います。
ぱちぱちぱち
復習したおかげでストーリーも少しは理解できたし、曲もいいし、もう一度見たいなと一か月経った今でも思える作品。他キャストも素敵なんだろうけど、再度見るならまた同じキャストで見たい!
いつかまたハンミュツアーと重なることを願いつつ。その時は歌が増えてるといいね和田クン!
以上!