浮かれポンチ、ハンミュを観る

主に観たハンミュ(韓国ミュージカル)のレビュー置き場。

Evita / エビータは聖女か?悪女か?多分、聖なる悪女

 

 

★★★★☆

 

・2018年7月8日(日)17時30分

東急シアターオーブ

・エビータ:エマ・キングストーン

 チェ:ラミン・カリムルー

 ペロン大佐:ロバート・フィンレイソン

 

なんと会場を間違えてBunkamuraに行ってしまいました。行ったら改装中でびっくり。タクシー飛ばしてヒカリエへ。だってチケットにBunkamuraって書いてあるもんだから(主催のところ)、ぱっと見でそっちだと思っちゃうわ。

 

今回の予習のために初めてちゃんとエビータの音源を聞いてみました。Don’t Cry for Me Argentina とAnother suitcase in Another Hallくらいは聞いたことあったけど、他の曲は全く。全体を通して好きだったのは妖艶なI’d Be Surprisingly Good for YouとしたたかなRainbow High。どちらもエビータのオンナとしての魅力にフィーチャーした良曲だと思います。”Christian Dior me”っていう歌詞が好き。

エビータはJCSの直後くらいに作られていて、ロイドウェバー作品の中でも初期の作品。だからかは分かりませんが構成とか曲がJCSとかヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコートに似てるところが多いなと思いました。Rainbow Tourの曲調やナレーター(チェ)が情景を歌う構図とか、「ヨセフ」に出てくるコートの曲にそっくりではないですか?

 

エビータはミュージカルの女性パートの中でも歌がトップレベルに大変な役みたいね。サントラを聞いていた時はそこまでは思わなかったけど、生で聞くとどういうことかよく分かります。地声で高音を歌い続ける曲がたくさんあるのです。強靭な喉の持ち主でないと到底持たなさそうです。

こんな動画があるくらいです。

Who Sang The "A New Argentina" High Notes The Best? (E5-G5)

 

Rainbow Highもサビの度に声張りまくりなので、すごい迫力でした。声量に圧倒されて、鳥肌立ちました。

 

それに比べて歌という意味では、あまり見せ場のないチェですがラミン様、1ミリもぶれない歌と演技と存在感はさすがでした。

 

来日版公演というのはセットにお金と手間がかかるだろうということはよく理解できるのですが、今回はセットが結構しょぼくて、そこは正直残念でした。「そのドア枠なに?」みたいことが頻発。セットが簡素で、想像で補うタイプの作品も嫌いではありませんが、シアターオーブなんだし!ロイドウェーバーなんだし!チケット13,000円もするんだし!もう少し豪勢なもの作れなかったのかしら。キャスティングにお金かけすぎたの?

 

あと要所要所で後ろのスクリーンに、実際のエヴァフアン・ペロンの映像が写し出されてました。ちょっとドキュメンタリーみたいでおもしろかったですが、舞台としてはこれもちょっと手抜きでないかい?

 

衣装はそのまま持ってこれたのか?シャビーという印象はありませんでした。ちゃんとしてた。

 

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ハンミュを見慣れていると、日本はカーテンコールが長いなと感じます。だらだらだら、いつまでやってるんだ!と最後舞台にも観客にもちょっと辟易する。そんなに時間かけるなら韓国でよくあるように、代表的なフレーズをそれぞれ歌ってパパッとシメてほしいものですな。

 

とりあえず、ミュージカルになって、こんな極東の国でまで演じられるエビータ。本人はアルゼンチンでどれほどの人気があるのか、現地に行って感じてみたくなりました。春を鬻いだり、汚職したり横領したりと、必ずしも綺麗なことばかりではない人物だったようですが、結果として国民に愛され「聖女」と呼ばれた。ちょっと悪い方が魅力的に映るのか、悪さをも浄化してしまうような魅力の持ち主だったのか。ミュージカルでは、彼女を良いとも悪いとも決めないキャラ設定なのだと思います。人間そう簡単に、善悪どちらかになれるモンじゃない。33歳という若さで亡くなってしまいましたが、その描き方も悲劇的ではない。

後世にミュージカルになるほどだから、彼女の推進力や求心力は、短い期間でも相当強く発揮されたのでしょう。才子短命という言葉がぴったり。あのすごい自信もちょっとでいいからお裾分けいただきたい。彼女がもっと長く生きていたらアルゼンチンはどうなっていたかと思うと、見てみたかったような、末恐ろしいような、そんな気がしますが、もし長生きしていたら、ミュージカルにはなっていなかったかもしれない。

 

 

以上!