浮かれポンチ、ハンミュを観る

主に観たハンミュ(韓国ミュージカル)のレビュー置き場。

킹아더 / キング・アーサーは強くなっていた

 

 

★★★★★

 

・2019年3月15日(金)20時

・忠武アートセンター大劇場

・アーサー:고훈정(コ・フンジョン)

 グィネヴィア:간미연(カン・ミヨン)

 モーガン:박혜나(パク・ヘナ)

 メレアガン:이충주(イ・チュンジュ)

 ランスロット:장지후(チャン・ジフ)

 

f:id:oucalaisponti:20190318182559j:image

 

フランス版がYouTubeに落ちていて、それを何度も見て臨みました。今回の韓国版も全く同じ作りだと思っていたら、曲が少し増えていたり(主にリプライズ)、筋が変わっていたりしたので、そこら辺を比較しながらのレビューになります。フランス版は衣装がめちゃめちゃ豪華でセンスが抜群なので、そちらも一見の価値ありです。

 

 

 

⚔大体のあらすじ(話が分かれるところまで)

 

<一幕>プロローグ。マーリンが眠るドラゴンに呼びかけ、ペンドラゴン王が死んだ今、ブリトン人はサクソン人の脅威にさらされており、国を守るよう頼む。ドラゴンは王の息子のみがブリトン人に平和をもたらすことができると告げ、次期王が即位して一人前になるまでそばで見届けるよう、マーリンに約束させる。

 

数十年後?騎士たちが岩に刺さった剣・エクスカリバーを引き抜く権利を巡って対決をしている。対決に勝ったメレアガンは剣を引き抜こうとするが抜けない。アーサーは剣を持っていない兄のためにエクスカリバーを引き抜いてみたところ、なんと抜いてしまった。彼が次の王になるべき人物だったのだ。騎士たちはかしずくが、自分こそ王に相応しいと思っているメレアガンは気に入らず、対抗を決意する。

 

突然王になって戸惑うアーサーに、マーリンは王国に平和と繁栄をもたらす聖杯の存在を告げる。聖杯は魂が純潔な騎士にしか探し出せない、とも。そこに知らせの者が、メレアガンがある騎士の城を奪略し、娘のグィネヴィアともども監禁していると知らせがくる。アーサーは城の解放に向い、メレアガンを倒して城を解放する。対決の中で負った傷を手当てしてくれたグィネヴィアとは両想いになり、自身の城に王妃として迎え入れる。

 

未来の女王の到着を祝う宴の最中、謎の魔女モルガンが現れてある物語を語り始める。昔、とある騎士は夫婦で大変愛し合っていたが、その騎士が仕えている王が妻を見初めてしまう。妻をどうしても手に入れたかった王は、魔術師の力を借りて騎士が戦地に行っている隙に騎士に姿を変え、妻を騙して子を産ませる。その王というのが先代の王ペンドラゴン、生まれた子どもがアーサーであった。モルガンはこの事件を目撃していた夫妻の娘で、アーサーの異父姉にあたる。何も知らずに戦死した父と、生涯悲しみに打ちひしがれた母の敵を討つために姿を現したのだった。ちなみにこの魔術師というのはマーリン。モルガンは復讐のため、グィネヴィアに姿を変えてアーサーを誘惑し、その子どもを身ごもる。モルガンの仕打ちに戸惑いを隠せないアーサーは彼女を処刑しようとするが、二人は宿命で結ばれているとマーリンにたしなめられる。

 

ある日、アーサー王の城にランスロットが騎士に任命してもらうために訪ねてくる。応対したグィネヴィアはその純潔な魂に心を惹かれてしまい、ランスロットもまた王女に心奪われる。アーサーの信頼を得て晴れて騎士となったランスロットだが、不穏な三角関係の気配が漂う。

 

マーリンにアーサーに苦しむ民衆の声に耳を傾け、彼らの幸福のために努めるよう助言する。アーサーは円卓の騎士を組織してサクソン人の駆逐と聖杯の探索を誓う。<一幕終わり>

 

 

<二幕>アーサーへの復讐に燃えるモルガンに対して、もう憎悪の連鎖をやめるように言うマーリン。しかしモルガンはこれは憎悪ではなく、誰からも愛されず、また愛することができない自分の羨望の裏返しだと説明する。そして自分をそのようにしてしまったアーサーに、何が何でも復讐することを誓う。

 

アーサーとグィネヴィアの結婚のお祝いに、モルガンは身につけた二人を生涯結ぶというペアリングを「あなたの愛する人につけてあげなさい」とグィネヴィアに贈る。

 

サクソン人を駆逐したアーサーは、遂に円卓の騎士たちに聖杯を巡る旅に出るよう命じる。その中でも魂が純潔なランスロットは人一倍の期待を寄せられている。出発の挨拶のためにグィネヴィアのもとを訪ねたランスロットに、グィネヴィアはモルガンからもらった指輪の片方を渡す。

 

王としての地位を立派に確立したアーサーを見届けたマーリンは、自分をこの世界に縛っていたドラゴンとの契りは達成されたとして、鳥となって自由の世界へ飛び立っていく。

 

その頃、王の地位とグィネヴィアの両方を手に入れたいメレアガンは結託したモーガンの助けを得てランスロットに姿を変え、グィネヴィアを自分の城へとさらってしまう。アーサーが助けにきたら返り討ちにしようという作戦だ。

 

聖杯を探しているランスロットはその道中でグィネヴィアの身に起きたことを知る。愛する彼女を救いにいけば、それは不義の愛のために任務を放棄したことになり、魂の純潔は失われる。すなわち聖杯を見つけ出すことはできなくなる。結局ランスロットはグィネヴィア救出のためにメレアガンの城へ向かう・・・。

 

f:id:oucalaisponti:20190318182625j:image

 

 

⚔あらすじ、以下に感想とツッコミを交えて続く

 

今回は開幕2日目に見にいきました。お目当てはずっとちゃんと見てみたかった、コフンジョン氏。前回見た時はロキホラのリフラフで、せっかく歌が上手いのにあまり良さが味わえなかったのですが、今回はじっくり見られました。でも予習するにつれて「ハンチサン氏の方がアーサーっぽいんじゃない?」と思ってしまい、結局両方見ることにしましたw そう思ったのは、ハンチサン氏の方がフランス版と同じくチャラい軽快な印象だから。曲もアップテンポなので、合うかなと思った次第です。

 

しかし何なんでしょうねあのコフンジョン氏のいい声は。堅実な王様にふさわしい、老成していて力強い声。声張った時の声量と真っ直ぐ届く感じが、皇帝リュジョンハン様を彷彿とさせるレベルでした。だから王としての立場を歌う曲とかは決意を感じる力強さで、すごく説得力がありました。

 

他方で、序盤でアーサーとグィネヴィアの「ボクたち二人のステキなまっほーうー♡♪」みたいな曲があるのですが、それが曲調も歌詞も振り付けもシーツ持って踊ってるあたりも、全てが完全に脳みそお花畑。私でもびっくりな浮かれポンチ具合なのですが、コフンジョン氏はもしかして無理してる?みたいな似合わなさでしたw 硬派で真面目なイメージなので、こういう曲歌ってるのもまあ面白くはあるのですが。笑 この辺ハンチサン氏はうまくこなしそうです。

 

そしてそのポンチッチな「まほう♡♪」ソングを、傍から冷めた目で見て復讐を誓うチュンジュ氏のメレアガン。地に足ついてるとはこのことだわと思いましたww

 

悪役二人とも、とても良かった!実はフランス版を見ている時から、モルガンとメレアガンが一番楽しみでした。二人ともただの悪ではなくて、切実な悪なのよね(何だそれ

 

このキャラたちは曲もいいのですが、今回モルガン→パクヘナさん、メレアガン→イチュンジュ氏と来ました!もう期待しかありません。

 

実際にも出てくるたびに「く~!カッコいい!」となるお二人でした。黒い感じがとっても素敵(ボキャ貧

 

ヘナモルガンは地底から湧いてくるような凄みのある声でアーサーに暗い影を落とし、チュンジュメレアガンは鋭いシャウトでアーサーの幸せを切り裂きます。「敵の敵は味方」ということで結託するこの二人、フランス版では対等に手を組んでいたようでしたが、韓国版ではモルガンの方が一枚上手。「王位も王妃も」というメレアガンの欲望を叶える手助けをするように見せますが、実はランスロットがメレアガンを殺してグィネヴィアを助け出せば、二人の愛はさらに高まり、アーサーはさらに傷つくだろうと見込んでのこと。所詮メレアガンは復讐のための駒に過ぎないのです。モルガンの、復讐への執念が強調されていたと思います。

 

二人が絡む曲は、フランス版では一曲だけだったのですが、今回なんと二曲に増えてました。 “Mon combat(私/俺の戦い)”はもともとモルガンとアーサーがお互いに「お前と戦うぞ!」ということを歌った曲ですが、これがモルガンとメレアガンの曲に変わってました。「うちらのアーサーとの戦い」というわけですね。

 

私としては二人の絡みが一曲しかないのが残念だったので、この変更も嬉しかったです!曲の内容からしても違和感ないしね。

 

代わりにモルガンとアーサーとの絡みは、それまでの曲のリプライズという形で、終盤のモルガンを追いやるシーンに作られていました。この作品、色んなキャラクターの絡みが見られるのもいいところです。

 

f:id:oucalaisponti:20190318182734j:image

 

 

ランスロットの存在意義

 

ところで今回の演出、衝撃的事実が…

 

上述の通り、メレアガンにさらわれたグィネヴィアをランスロットが助けにいくシーンがあるのですが。なんと

 

 

 

ランスロット

 

 

 

返り討ちに遭って

 

 

 

死んだーーー!!!

 

 

 

私が知っているフランス版では、ランスロットは無事にグィネヴィアを助け出して、アーサーの許に王妃を連れ帰るのだけど…というか本来のアーサー王伝説でも、ランスロットはこんなところでは死にません!それどころか、不貞の罪で火刑にされるグィネヴィアを助け出すスーパープレイをかまします!またまたアーサー王大迷惑!

 

でも本作ではここでランスロット死んじゃったので、この先どうなるんだべ~と、話を知っているつもりだった身としては俄然興味が湧きましたがね。

 

ちなみに結局グィネヴィアは誰が助けたのかと言うと、アーサー王自らお出ましになりました。w

 

フランス版では最後までしぶとくアーサーの傍に残っていたモルガンも、こちらでは違う処遇でした。アーサーはモルガンに宿る自分の息子モードレッドに対し、彼こそは自分が受けられなかった母の愛の中で穏やかに育つよう、また母を愛するように語りかけてモルガンを驚かせます。自分に降りかかるモルガンの復讐を、慈愛という形で返すのでした。思うような復讐を遂げられなかったモルガンは失意と憤怒の中、失脚。アーサーは自らの力で、邪魔者を全員駆逐したのです!マーリン!アーサーは立派になったよ!

 

最後は残ったグィネヴィアを処刑しないまでも国外追放し(多分)、「これからは王国と民衆のために頑張るぞ!おー!」と意気込み、立派な王様となって終わります。

 

f:id:oucalaisponti:20190318182712j:image

 

私は本来はわりと原作に忠実にしてほしい派というか、元のストーリーを重んじてほしい派なのですが、今回は変更後の韓国版の方がストーリーとしては納得感がありました。というのも、フランス版は「え、それで終わるの?」みたいな間抜けな終わり方だからです。

 

どういうことかというと、上述の通りランスロットがグィネヴィアを助けて帰るのですが、アーサーは二人の仲を知ってしまい、家臣たちは「厳罰を!処刑!」と迫ります。三人ともお葬式みたいな顔になって、それでもグィネヴィアを愛するアーサーは、最後の曲で「いつか彼女を許せる日が来ますように」と祈るように歌って、終わり。ジ・エンド。FIN。

 

え?許すの許さないのどっち?というか一国を背負う王様が、夫婦再構築のお願い事だけして、終わり!?ランスロットとグィネヴィア、二人で光の中に消えていったよ?絶対またいちゃいちゃする気だよ?二人まだ指輪してるし、モルガンも生きてるし、何も解決してないよ?陛下、お気を確かに!?!?となりました私は。

 

だからフランス版のアーサーは、ただただ異父姉の魔女やライバルや妻や忠臣にボコボコにいたぶられる話やん!というイメージだったのです。

 

それから考えると、韓国版は各方面にちゃんと落とし前つけているしアーサーの成長も感じられて、ランスロット討ち死にはびっくりしたけど、そうでもしないと話が収まらないかと納得しました。尊い犠牲、ランスロット氏。レスト・イン・ピース。

 

 

以上!

 

  

oucalaisponti.hatenablog.com

 

 

 

oucalaisponti.hatenablog.com