浮かれポンチ、ハンミュを観る

主に観たハンミュ(韓国ミュージカル)のレビュー置き場。

일테노레 / イルテノーレでオペラ歌手の誕生と名作の誕生に涙する

 

 

★★★★★

 


・2024年2月25日(日) 14時

・芸術の殿堂 CJトウォル劇場

・ユン・イソン: 서경수 (ソ・ギョンス)

 ソ・ジニョン: 박지연 (パク・ジヨン)

 イ・スハン: 전재홍 (チョン・ジェホン)

 

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また韓国の創作ミュージカルに名作が生まれてしまった。その初演に立ち会えて心から良かった。

 


🤵🏻元祖マイ推しの成長ストーリーでもある

 

評判良かったので千秋楽に滑り込み(と思ったら延長されたw)。グァンホ・ウンテももちろん気になったけど、チケット取れなかったりスケジュール合わなかったりで初心に戻りソ・ギョンス。

 

私はあまり俳優個人を強く推すことはないので、個人的な思いを抱くことも少ないんだけど…ソギョンスは私がハンミュ沼落ちした原因になった張本人で、2016年に初めての韓国ミュージカル「イン・ザ・ハイツ」を見た時にその歌声と長身と筋肉に魅せられて、韓国に通うようになったのでした。インザハイツではベニーをやっていて、それがいまやグァンホやウンテと並ぶほどに!二人に比べたら人気やチケットパワーはまだまだかもしれないけど、韓国ミュージカルに引き込んでくれた人が着実に成長していて嬉しいし感慨深いな〜と本作のキャストが発表された時は思ったのでした。

 

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それでも今回本作を見ることになって、ベテランがやるような役を本当にこなせるのか?微塵ほどの心配の気持ちはあったけど、本当に見事に演じ切っていたし、ソギョンスでこそこの作品を見ることができてよかったなと思いました。

 

他キャストは見てないから想像だけど、一番若かったから、等身大の若々しいイソンが見られたのではないかと思う。夢中になれるものを見つけてどんどんのめり込んでいく姿が、見ていてこちらまで心踊るし、微笑ましかった。好きなものが見つかるって本当に幸せなことだし、どんどんハマっていく時の興奮やときめきは何物にも変えがたい。

 

ソギョンスはミュージカル俳優しかいないミュージカル系の授賞式とかの場でも「ミュージカルが大好きなソ・ギョンスです」って自己紹介しちゃうくらい、本人もミュージカルが大好きみたいだから、きっとミュージカルと出会った時もこんな感じだったんだろうなと勝手に想像したり。成長過程がリアルに感じられたし、体が大きいだけに内向的な部分は逆に際立ち、他方で舞台に立つ場面では舞台映えして、オペラ歌手になるべくして生まれたイソンの天性を感じることができた。ソギョンスがいるイルテノーレ、私にとっては完璧だった。

 

そりゃああの曲たちをグァンホでも聞きたかったけどさ!というかグァンホはいつ何時も聞きたいんだけど。でも最初の方にイソンが「歌ってみたら案外うまいじゃん!」ってなるくだり、グァンホなら純粋に「いやもっと早く気づいてるだろ普通!!」ってなりそう。笑

 

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🤵🏻幕間にハンカチのご準備を

 

しばらくは、イソンがオペラに出会って、仲間と出会って、大切な人もできて、みんなで試行錯誤しながら舞台作りに励んで…と、独立運動の怪しい雲行きはありつつも、明るい雰囲気なんだけど、オペラ舞台本番の感情ジェットコースターがすんごい。涙もジェットコースター。

 

イソンがカマキ暗殺計画を知ってジニョンに詰め寄り、独立運動への想いも分かりつつも、一生懸命作り上げてきた舞台壊さないでくれと訴えるあたりから涙腺がもうダメだったんだけど、その後イソンが決死の覚悟で舞台上からジニョンに向かって全身全霊で歌う曲は、その後の結末を知っていても全私が泣いた。

 

親に縁を切られてまでオペラにのめり込んで、苦労を乗り越えて作り上げた舞台。暗殺計画のために全編を通すことができないなら、せめてフィナーレを歌ってから終わらせたいという思いと、最期にジニョンに愛していたと伝えたい想いと…。「君が僕の始まりであり、終わりでもある」という歌詞、この場のことにとどまらず、その後のイソンの人生が終わる時のことまでも示唆していて、二人の全てが詰まっているなと思いました。声を詰まらせるのを我慢しながら、ジニョンを見つめて声を張り上げて歌うイソンの姿が脳裏から離れません。

 

結果としてジニョンは、最期にイソンのこの歌を聴くことができて幸せだったんじゃないかな。そして老いたイソンが最後に歌う『夢の重さ』も、締め括りにふさわしい、切なくも力強く美しい旋律で戦慄しっぱなしでした(ダジャレで感動台無し

 

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ジニョン役のパクジヨンさん、何気にお初。低めの声で、ジニョンのような芯の強い役がすごく似合っていたので、レベッカの「私」とかやってる姿があまり想像できない。小さい体からよくあんな力強い声が出るなぁ。序盤はだいぶ高圧的なキャラクターだったけど、イソンに出会って丸くなったのかな?凛としたジニョンですごく良かった。

 

スハン役のチョン・ジェホンさんもすごくいい低い声で、イケメンだった。男子高生にしてはだいぶ渋くて、学ランより革ジャンの方が圧倒的に似合ってたけど笑

 

アンサンブルもいつも以上に上手な人ばかりで、声楽が得意な人が集められていた印象。キャラクターもそれぞれ個性的で、ピアニストと語学が得意な子の恋があったりしてちょこちょこ笑えます。ベイカー先生も可愛らしかったし。ベイカー先生のルー語は何気に助かった。

 

イソンがオペラの練習室に入った時のベイカー先生と女学生たち、ぎこちないイソンとのわちゃわちゃした掛け合いは可愛すぎてずっと見ていたかった!あとイソンがピアノを弾きながら、ジニョンと「このオペラのここが好き、あそこが好き」ってやってる時。顔が近づきすぎたことに照れて楽譜遠くにぶん投げるイソンww ここ、楽譜を拾いながら二人でわちゃわちゃしてる時にパクジヨンさんが素で爆笑しちゃってセリフ続けられなくなってた。笑

 

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久しぶりの芸術の殿堂だったけど、CJトウォル劇場はサイズ感がちょうど良くて、舞台との一体感を感じることができますね。『イル・テノーレ』、派手さはないけどストーリーの完成度は高いし、美しい曲ばかりだし、泣けるし笑えるし、初演に立ち会えたことが自慢できる作品でしたありがとう。

 

以上!

 

 

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레미제라블 / レ・ミゼラブルに間に合う夢破れて

 

 

★★★★★

 

・2024年2月24日(土) 14時

・ブルースクエア

ジャン・バルジャン: 민우혁(ミン・ウヒョク)

 ジャベール: 김우현(キム・ウヒョン)

 ファンティーヌ: 조정은(チョ・ジョンウン)

 アンジョルラス: 김성식(キム・ソンシク)

 エポニーヌ: 김수하(キム・スハ)

 コゼット: 이상아(イ・サンア)

 マリウス: 윤은오(ユン・ウノ)

 

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なんとソウル行きの飛行機が遅れ、しかも入国の列が混雑しすぎて、会場に着くのが20分ぐらい遅れてしまったぁあぁぁ。I Dreamed a Dreamはロビーのモニターで見ました…チョジョンウンさんのファンティーヌ絶対よかったのに…

 

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瀕死のファンティーヌの横で対峙するバルジャンとジャベール、格闘しながらあんなに歌えるのすごいんだけど。殴り殴られ、地面に転げたりしてるのに歌が全くぶれない!

 

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ミン・ウヒョクさん、ウィキッドのフィエロアイーダのラダメスは見ていて、それも7-8年前(!)なんだけど、健康的な青年の役のイメージが強かったから、今回のジャンバルジャンはミンウヒョクさんと知りながら「誰!?」という感じで見ていました。おひげで顔もよく見えないし。でも声もだいぶ低めで歌っていて重厚感があって、包容力のある父親像がうまく演出されていたと思います。

 

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キムウヒョンさんも男臭くて好きなんだけど、ジャベールもダンディで良かったな。特に後半のカツラがあまり似合ってないのが残念w 橋から飛び降りるシーン、スローモーションで遠ざかっていったけどあれどうなってるんだろ…。

 

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アンジョルラス役のキムソンシク氏は、とても声が出ていたし太めの声で朗々と歌っていてうまかった。これからいい役がついていくじゃないかな〜。と思ってたらマタハリのアルマンとかはやったことあるのね。知名度や出演歴見てもそれだけちょっと浮いてるからよく分からんキャスティングだけど(失礼 でも歌うまいし高身長で舞台映えするから、今後どんどん出てくると期待したい。

 

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Do You Hear The People Sing や One Day Moreは、本作のみならずアンジョルラスのハイライトでもあると思うけど、そんな彼が引っ張っていて頼もしかったです。ガブローシュの子役くんもハツラツとしていてよかった!

 

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コゼットとマリウスは映画版のビジュアルが良すぎて、申し訳ないんだけど、舞台版では目が物足りなさを感じてしまった。今回の二人も美男美女だったし、駄目だったわけでは決してなく、エディ・レッドメインアマンダ・サイフリッドはなかなか超えられないわよね。うんごめん。映画版もA Heart Full of Love、大好きなんだよね~。

 

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エポニーヌのキムスハさんは、エヴァ・ノブルザダに声が似てて、ミス・サイゴンのキムをやってほしいと歌を聞いてて思った(決して顔がどろどろだったからではない)。と思ったら既にガッツリやってた。私の耳すごい。

 

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今回初めて「レ・ミゼラブル」を見ましたが、ミュージカルがいいと原作も読みたくなりますね。ヴィクトル・ユーゴー作品は「ノートルダム・ド・パリ」も大好きだったから、レミゼもきっといい作品なんだろうなぁ。大作すぎて手をつける勇気が出ないけど、今年いっぱいくらいかけたら読み終わるかな。いや次にレミゼを見る時までに……笑

 

以上!

 

 

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デビルが国と言語を超えて白黒つけにきた

 

 

★★★★★

 


・2023年7月16日(日)12:30

・ヒューリック東京

・X-White:マイケル・リー

 X-Black:ハン・チサン

 ジョン・ファウスト:チェ・ミヌ

 グレッチェン:Akane Liv

 ジョンの影:大山真志

 

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前に韓国でよく見たもののよく分からなかった『ザ・デビル』、日本版『デビル』としてリベンジチャンス到来!

 

マイケル先生は全身白を着るとジーザスみがすごい。舞台に十字架あるし。


ハンチサンはセクシーなX-Blackだったなぁ。やっぱりああいう役やらせるとうまい。ちょいワルロック系。ノリノリすぎてたまにマイケル・ジャクソン入ってたけど。舞台にマイケルが二人いた(?)


そしてチサンブラックは顔が妙に青白くて、マイケルホワイトは何気に日焼けしてて、服の色と顔の色が逆だな〜とかどうでもいいこと考えてた。笑


韓国人キャストを多数交えて作り上げられた今回の作品、言語的には日本語なんだろうけど、どうなるんだろうと、その辺りも気になっていました。

結果的には基本は全員日本語、でもマイケル先生だけ基本英語でハモったりするところだけ日本語。ラテン語の歌詞も出てきたりするので、マイケル先生については歌い始める度に「これは何語?英語っぽくないから日本語?あ、ラテン語か」と判別するのにちょっと時間がかかった。歌詞自体は後ろに映し出されるから、歌ってることの意味が分からないということはなかったけど。

別に英語で歌うのは全然悪くないんだけど、逆に「全部日本語で頑張ってくれてハンチサンありがとう〜!」ってなる。チェミヌ氏もセリフ多いのに日本語お上手だった。


あとはセリフが多いジョンにはJohn’s Shadowというキャラがついていて、ジョンのセリフを代弁したり補足したりしている。このキャラは韓国版にはいなかったので、今回工夫したポイントなのではと思う。あまり違和感なかったし、ジョンと一緒に歌う場面では歌に厚みが出ていたので、よかったと思う。


背景に歌詞がかっこよくプロジェクションされてたから、聞きなれない聖書的な言葉も聞き取りやすかった。あとラテン語のところはラテン語に加えて日本語で意味が写し出されていたり。色んな工夫をして、言語の壁を超えた作品が出来上がっていて素晴らしいなと思いました。どんな作品でもできるわけじゃないんだろうけど、こういうコラボは新しいミュージカルの形としてアリ寄りの大アリだと思う。

 

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前に韓国で見た時は、言葉も聞き取れずあまりストーリーも分からずでそこまで刺さらなかった本作ですが、今回よく分かって、解釈の仕方も変わりました。


前見た時は、ホワイトはなぜジョンたちに手を差し伸べないのだろう、傍観しているだけなのだろうともどかしく思っていたけど、当時のその解釈が間違っていたんだなと分かりました。

ブラックもホワイトも、ジョンたちに対して何かアクションを起こす存在なのではなくて、逆に彼らが選択したことを反映する存在。だからジョンが「選択したのはぼく」と言っているし、悪に手を染める度にブラックの力も増していく。

その結果ジョンとグレッチェンが窮地に陥っても、ホワイトは何かできるでもない。反対にジョンがグレッチェンを救うために自ら命を絶つ選択をした結果として、ホワイト=光が強くなり、闇を覆った。闇が光に満たされた結果、グレッチェンもジョンも光の中で元に戻ることができた。のだと思いました。


そして早口でジョンの悪行をアンサンブルの人たちが歌ったりするところは、韓国語だったら絶対に分からなかった。金融用語も多くて、日本語でもよく分からないんだもの。ジョンの会社が敵対的買収をした会社の社長さんが自殺しちゃうくだりとかも、言葉でしか説明されてないから誰の何の話なのか分からなかったと思う。


ともかく私は、この企画のおかげで日本にいながらマイケルリーとハンチサン見ることができたし、国内外俳優のコラボという新しい取り組みを見ることができたし、消化不良だった作品を少しは理解することができたしで、色んな面で大満足ミュージカル体験でした。

 


以上!

 

미드나잇:앤틀러스 / ミッドナイト:アントラーズ やはり大学路は欠かせない

 

 

★★★★★

 

・2023年4月16日(日)15時

・Culture Space NU

・ビジター:박민성(パク・ミンソン)

 マン:노희찬(ノ・ヒチャン)

 ウーマン:정우연(チョン・ウヨン)

 マルチ:정종환(チョン・ジョンファン)

 マルチ:이미주(イ・ミジュ)

 

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久しぶりに大学路でミュージカル見た!やっぱり大学路ミュージカルはいいですわ。お手頃価格で良質な作品が見られる。いくらでも渡韓できるなら、大学路縛りのハンミュツアーとかしたいくらい。

 


『ミッドナイト』は韓国の観客が好きそうな「人ならざる存在が出てくるサスペンスもの」。私もサスペンス好きだから、初演の時からずっと気になってる作品でした。

 

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登場人物はメイン3人とマルチ2人だけど、マルチも他と同じくらい活躍していて、5人をほぼ等しく楽しめる作品でした。女性マルチのイ・ミジュさんは声がよく通っていて特にうまく感じたな。

 


ウーマンもお淑やかなのに、途中でビジター相手に豹変して猟奇的なまでのガッツを発揮。こういう時って女性の方が強いのかもしれない。「死体(と思っているもの)の処理、するわよ‼︎」って息巻いてるのを、「『風と共に去りぬ』のスカーレットみたいだなぁ」と思いながら見てました。家に侵入してきた北兵を殺した時の、あのガッツ。

 

パク・ミンソンさんも確か初めて?大柄で逆らえない感じのビジター。

 

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ずっと同じセットで場面転換もないし、難しいセリフが多くて分からないところも多かったけど、とりあえず前日に見た「ベートーヴェン」よりは内容が豊富なことが分かりました。あれは本当に何だったんだ。笑

 

以上!

 

 

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베토벤 / ベートーヴェンは音楽をやればできる子(けどやらない

 

 

★★★★☆

 

・2023年4月15日(土)19:30

・世宗文化会館

ベートーヴェン:박은태(パク・ウンテ)

 アントニー:조정은(チョ・ジョンウン)

 カスパー:이해준(イ・ヘジュン)

 

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🎼とりあえずこのあらすじを見てくれ

 

第一幕

ベートーヴェンの葬儀。アントニーが参列している

・過去。ベートーヴェンは演奏のため訪れた後援者の舞踏会でアントニーと知り合う。アントニーの実家にはベートーヴェンにゆかりのある(?)楽譜があるらしいと分かる

・弟カスパーが婚約者を紹介するが、誰も信用しないと決めているベートーヴェンは婚約者に対して不信感を露わにする

・後援者のキンスキー侯爵がベートーヴェンのコンサートの中止通達を出す

・怒ったベートーヴェンが侯爵を訪ねるとそこにはアントニーがおり、考え直すよう侯爵を説得してくれる

・感謝を伝えるためにベートーヴェンは実家で亡き父の遺品整理をしているアントニーを訪ねる。そこで出会った時に話題に上がった楽譜も見せてもらう

アントニーは遺品整理のためその場では相手ができず、ベートーヴェンは自分の憩いの場所に気が向いたら来てくれ、と伝える

・その場をアントニーが訪れてベートーヴェンと再会し、二人で散歩してたら雷雨に襲われる

・雷雨の中二人は盛り上がってキスしてしまうが、我に返ったアントニーは走り去っていく

・自分の中に生まれたアントニーへの気持ちに気づくベートーヴェン。聴力は弱っても音楽を頑張るぞと決意

・帰宅したアントニーを待っていたのは夫フランツ。アントニーに遺品整理をやめさせて連れ戻すと伝える。妻への不満を吐露

アントニーは、ベートーベンにもう会うことはできないと手紙を書く。ベートーヴェンは絶望して酒に走る

・カスパーが訪ねてくるが、相変わらず弟嫁を嫌っている上に愛に絶望したベートーヴェンは、妻子への愛を歌う弟とはまたも分かり合えず、決別

・両親やキンスキーや上流階級の幻影にうなされるベートーヴェン。そこにアントニーが現れてその愛に力を得、音楽を頑張るぞとまたもや決意して一幕終わり

 

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第二幕

・2年後のプラハベートーヴェンは弱った聴力のせいでコンサートでうまく指揮できず、その場を去る

・一方アントニー夫妻もプラハに訪れていた。実家を売りに出すと夫に告げられたアントニーは耐えきれず一人で夜の街に出たところ、ベートーヴェンと再会

・二人で飲みにいき、ベートーヴェンは勢いで駆け落ちを持ちかける。それはさすがに断られるがアントニーの心もまたベートーヴェンに向いている

ベートーヴェンは気持ちを抑えきれず、カールスバーグの実家までアントニーを訪ねる

・彼女はやはり気持ちには応えられないとベートーヴェンを追い返すが、二人でいるところをアントニーの義理の妹に見られ、夫に報告されてしまう

・妻を責めるフランツ。アントニーも夫に支配されるのはもう耐えられないとぶつかる

・家を出たアントニーはまたベートーヴェンと再会。アントニーの子どもを連れてベートーヴェンと駆け落ちする相談をする

・義理の妹が子どもたちを連れてくるはずが現れず、代わりにアントニーは夫に財産も子も奪うと脅迫される

・事情を知ったベートーヴェンは家を出たアントニーを探し回る。アントニーは飛び降りようとしているところだった

・子どもだけは諦められないアントニーに理解を示し、抱き寄せるベートーヴェン

・カスパーを呼び出したベートーヴェンは弟に謝罪する。愛の偉大さを知らなかったと。和解する二人

・再び指揮棒を手にしたベートーヴェンは音楽を頑張るぞとまたもや立ち上がる

ベートーヴェンの葬儀のシーン。アントニーも参列している

 

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🎼一言感想「うん、音楽やって???」

 

ベートーベンの話なのに、アントニーとのくっついたり別れたりが全て、アントニーとその夫の事情に左右されて、ベートーベンはひたすら受け身という感じ。途中からもはやアントニーの話なのではと思ってしまうほど。ベートーヴェンは完全に拗らせてるし。それにしても夫のソロ曲は、2回も3回もいらないかも。

 

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そんなこんななので、第二幕の間はずっと「音楽はどこいった???」と思いながら見ていました。

 

第一幕まではよかった。アントニーへの気持ちや聴力を失いゆくことへの苦悩がベートーベンの音楽を形作っていくことで、偉大な音楽家への道のりが描かれていくかと思ったのに、第二幕になったら、なぜかアントニーとの再会と別れを繰り返すばかりで、もはやベートーベンが音楽家であることすら忘れてしまうほどでした。

それなら、第一幕も下手にバランスを取らず、ひたすらアントニーとの関係性や想いに寄せた作品にしたらいいのにー、と思うほど。

 

でもねー、そうすると扱う人物がベートーヴェンである必要がなくなっちゃうのよね。ただの恋愛物語だと。だからやっぱり恋愛はあってもいいけど、それがベートーベンの音楽にどのような影響を与えたかということを、ミュージカルで見たいなと期待しちゃうのよね。そして、それも、欲を言えば『モーツァルト!』とも少し違った感じで。

 

そもそも、なぜまた音楽家を題材に選んだんだろう。どう考えても『モーツァルト!』と比較されてハードル上がるのに。クンツェ×リーヴァイなら題材はドイツ語圏の人じゃないといけなかったのかな。次はゲーテとかやるのかしら。

いや、でもまずはこの薄っぺらいストーリーをどうにかしてくれ。

 

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ベートーベンの曲を全編使うっていうのは、リーヴァイのオリジナル曲が聞けなくて残念だけど、私は悪くないと思ったな。なんたって楽聖の作曲ですから。劇中では音楽やってないけど(まだ言う

キャストはさすがのemkで豪華だし、ウンテさんもジョンウンさんも素晴らしかった。セットや衣装も文句なしの大ミュージカルなので、ストーリーが良くなったらまた見にいってもいいかな。

 

以上!

 

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식스/ SIXはヘンリー8世最大の功績

 

 

★★★★★

 

・2023年4月15日(土)14時

・COEX新韓カードartium

・キャサリン・オブ・アラゴン:이아름솔(イ・アルムソル)

 アン・ブーリン:배수정(ぺ・スジョン)

 ジェーン・シーモア:박혜나(パク・ヘナ)

 アン・オブ・クリーブス:최현선(チェ・ヒョンソン)

 キャサリン・ハワード:김려원(キム・リョウォン)

 キャサリン・パー:홍지회(ホン・ジヘ)

 

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高校世界史でヘンリー8世を勉強した時に、こいつはとんでもないやつだなと思った記憶あるけど、今回詳細に知ったらやっぱりとんでもないやつだった。


しかしおかげで五世紀後にこんな最高なミュージカル出来たよ!あの世の王妃たちー、見てるー!?

 

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こんなに粒揃いの女性キャストをダブルキャストで六役分も揃えられるのは、さすが韓国。なんたってパクヘナが浮いてない。みんなそれぞれいい声で、喉がすごつよで、演技も振り切ってて、笑えたし楽しかった。


アンブーリンはお転婆というかじゃじゃ馬というか。同じ首チョンパ系ビッチ(どういう系列)のハワードとはまた違う小ギャルビッチ感あったし、生意気全開のSorry, not sorryは頭の中エンドレスリピートソング。日常生活でちょっと反発したい時にも脳内リフレインしております。

 

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シーモアは唯一よく知っているパクヘナさん。安定の歌声で、上品で、泣かせて笑わせるクイーン。


アン・オブ・クリーブスの曲に先立つHaus of Holbein好きすぎる!あの蛍光メガネと襟ほしい。そんであのオタゲーみたいな変なダンスやりたい。

自分の処遇について開き直っちゃうのもいい。


ハワードのビッチっぽさ好き。キムリョウォンさんがスタイルめちゃくちゃ良くてビッチ感が増してた(褒めてる

ビッチなのに、ちょっととぼけたすんとした顔で踊ってるのが好きだった(褒めてる

直前に『ミッドナイト』のビジターやってた時の動画見てたからすごいギャップだったけど、どっちもハマっててさすがでした。

初見だと思ってたらリョウォンさん、2019年に『ザ・キャッスル』で見たことあったみたい!


パーは他の王妃とは違ってヘンリーに先立たれて生き残っ(ちゃっ)たから、正直一番インパクト小さいよね…と思って、どう扱われるのか気になってたけど、うまいことみんなをまとめ上げる役回りでした。それでいて持ち歌もアイロニーに富んでて、しっかり「喰えない」王妃の一人だった。

 

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よく見たらマイクまで各キャラのカラーに合わせてキラキラがカスタマイズされてた。


会場に着いたらまさかの一階席が半分くらいしか埋まっておらず、心配になったんだけど、その場にいた観客はすごい盛り上がりだったので、公演が始まったらそんなこと吹き飛んでました。

でもこんなにクォリティの高い作品が満席じゃないのはもったいない!女優さんばかりだと、おっかけてリピするファンが少ないだろうから、どうしても空いちゃうのかなぁ。

あとは80分という上演時間に対してVIP席12万ウォンっていうのも、少しお高いかも。でも昨今の韓国ミュージカルの値段の上がり方を考えれば、そんなものなのかなぁ…。

 

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もともと、韓国版の直前にやっていた英語の来韓版を見るつもりだったんだけど、予定が合わなくてこちらに。クオリティーについては、全然心配してなかったけど、案の定すごくよかったです。一つの演目で、実力のある女優さんをこんなにたくさん見れることもないと思うから、良い機会でした。

あとは様々な女性の生き様を見られる作品で、そういう観点でも面白かったです。世の中色んなキャラクターがいるし、それぞれにも色んな側面がある。人生いろいろ。女もいろいろ。

 

男もいろいろ…いや、ヘンリー8世お前は調子に乗りすぎや。

 

以上!

 

 

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물랑루즈! / ムーラン・ルージュ!でパリの歓楽街にトリップ

 

 

★★★★★

 


・2022年12月18日(日)14時

・ブルースクエア

・クリスチャン:이충주(イ・チュンジュ)

    サティーン:아이비(アイビー)

 ジドラー:김용수(キム・ヨンス)

    モンロス公爵:손준호(ソン・ジュノ)

    トゥールーズ=ロートレック:정원영(チョン・ウォニョン)

 

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12月20日からの上演だったので、ギリギリ間に合わなかったな〜と思って諦めていたのだけど、17-18日でプレビューをやると17日に知り、予定を変更して急遽18日公演をブッキング!少しだけど空きがあってラッキーだった。

本当はこの時間帯if/thenを見るつもりでチケットも取っていたのですが、ビッグチャンス到来に堪えきれず。

 

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会場に入ったらまずセットの豪華さに圧倒されます!

舞台には何重にも重なった大きなハート、客席の両側には大きな風車と、青く浮かび上がる巨大な象さん。天井の装飾のドレープも客席の方までせり出していて、全てが電飾でキラキラ輝いていました。黄色やオレンジのライトがゆっくり動きながら客席を照らしていて、音楽も相まって雰囲気抜群です。客席に入るだけでテンション上がりました。

フォトコーナーも豪勢なものが3つも作られていて、もうこれだけで見学料10,000ウォンくらい取れる。いや、実際見学料込みだな?VIP席18,000ウォンって!

 

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内容は、曲も筋も映画を踏襲してるけど、曲は映画公開以降のヒットソングが加えられているみたい。Tango de Roxanneが残ってたのは嬉しかった。ロートレックとかニニのキャラクターもミュージカル仕様かな?

 

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どの曲もよかった!ほぼヒットソングメドレーだから知ってる曲多いし、ノリのいいものも多いしで、ミュージカルにあまり馴染みのない人でも楽しめると思う。ストーリーは大したことないから、大体の筋書き知ってれば分かるし。笑

二幕頭のLADY GAGAのBad Romance からのブリトニーのToxicのパフォーマンスが好きだった。どちらも好きな曲というのもあるけど、ダンスや照明もカッコよくて本格的なショーのようでした。

 

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アイビーはちょっとニコール・キッドマンに似てる気がした。サティーンの登場シーンもこれまたアイコニック。空中ブランコで宙に浮いて、黒コルセットにトップハット。全身に煌めくダイヤモンド。ヒールはもう少し高くしてあげた方がさらにセクシーに見えそう。


チュンジュ氏も青年作家クリスチャンにぴったりよね。夢に溢れてパリに来る感じ、サティーンにゾッコンな感じ、サティーンの態度にいちいち不機嫌になる感じ、絶望して舞台に立つ感じ、全て素直に演じつつ、持ち前の爽やかさは常に胸ポケットから覗いておりました。

 

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というかダブルキャストはグァンホ神で、もちろん神の御声を本作でも聴きたいのは山々なんだけど、ポップソングがほとんどの作品だと少し勿体なくないかな…。ワイルドホーン作品みたいにゴンゴン歌い上げまくるグァンホを知ってると、「もっと声量を浴びせてくれ!ブルースクエアを震わせてくれ!あなたの声量に溺れたいんだ!押し潰されたいんだ!もっと!もっとぉおおぉぉ!」ってなりそう。多分ブルースクエアもそれを待っている(待ってない

 

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四人組LADY Mに一人ドラァグがいるということ、観た後に言われて知りました。全然気づかなかった!ツインテールのベイビードールという役がドラァグになるみたいです。キャストボードをよく見ると、確かに男性なんですよね。もっとちゃんと見ておけばよかった〜。

 


以上!