★★★★★
・2022年9月27日(火) 18:30
・ジェイ・ギャツビー:月城かなと
デイジー・ブキャナン:海乃美月
トム・ブキャナン:鳳月杏
🌅やばい人たちをも美しく見せる
ギャツビーの車を運転していたデイジーが人を轢き殺してしまったことで物語が大きく転換する本作。
同乗していたギャツビーが身代わりになることでデイジーは破滅を免れるが、愛する者のために真実を覆い隠した代償というものが、ギャツビーに降りかかってしまいます。
今回見た宝塚では、真実を明らかにして「神の目」を選ぶのか、それともデイジーへの愛を貫いて真実を欺き、自分が罪を被るのかという、「真実」と「愛」の対立を時間を割いて描いていたのは興味深かった。一応ギャツビーにもその二項対立が存在することが分かっているのだと。映画ではそこまできちんとは描かれていない軸だったから。
もちろんどちらも躊躇なくデイジーを庇う選択をするのだけど、ディカプリオギャツビーは「神の目」の存在にすら気づいていない風のやばい奴なので。
こうやって舞台と映画を比べれば比べるほど原作を読んでいないのが悔やまれるのだけど、少なくとも宝塚版では映画ほどギャツビーはやべー奴には描かれてなかった気がする。
映画だと完全なる偏屈執着拘泥野郎で、現実を受け入れない系男子で、ブチ切れて突然トムに殴りかかり、ニックたちも観客をもドン引きさせる共感の余地ゼロのやべー奴。レオ様の顔面でなかったら到底世に出せない御仁(ぼろくそ)なのですが、さすがに麗しの宝塚トップさんにそこまでさせるわけにもいかないのでしょう。
トムも映画では終始小憎たらしい、いや大憎たらしいモラハラ夫で、平気で「お前の女房を轢いた黄色い車はギャツビーのだぜ」とウィルソンに速攻吹き込むしな。
それを言ったらデイジーもギャツビーが死んだらシカト(宝塚版みたいに花を手向けるとかない)なので、だいぶモラルハザード横行ムービーだということが分かりました。というかそれをニックが側から見て「全員ヤバかったけどギャツビーだけはまともだった」という結論を導き出すんだけど、いやギャツビーもちゃんとやばい。
🌅デコデコのアールデコがよい
宝塚版に戻って、「デイジー」という花の名前を持つ女性に対して、「君はバラより美しい」と言うのは、名前を意識してのことなんでしょうか?「美しい花の代名詞」といえばやっぱりバラだと思うけど、「君はデイジーと言う名前でありながらバラよりも美しい」と言いたいのかしら。考えすぎ?
なんとかフォーリーズのショー場面好きだった。『プロデューサーズ』に出てくるショーを思い出した!一度本場のああいうレビュー、見てみたいなぁ。
マヌカンのうちのお一人がすごくはっきりとした濃い顔の美人さんで気になったのだけど、パンフレットで名前を見て調べても全員その人に見えて判明せず……男役の方かしら。並び的には、五人の中では頭の羽根が小さい二人のうちの一人だったから、五人の中では下級生の方なのかなぁ。
アールデコ調な舞台美術は、映画にかなり似せているような感じがしたけど、初演の時からそうだったのかな。アールデコとかこの時代のファッション好きだから、ビジュアルもとても楽しめました。
月城さん、すごくはっきりした歌い方をされる方でとても聞き取りやすかったです。顔もとても私好みのビューティー。スーツが似合う。
映画版を見直してすぐの観劇だったから、どうしても映画との比較が多くなってしまった。いつか小説も読んでみなければ。このしょうもない登場人物たちにまたお付き合いする気が芽生えたら。笑 でも名作の登場人物というのは、大体しょうもないものなのかもしれない。
以上!